こんにちは、薬剤師ちょこ(@yakuzaishi.choko)です。
このブログでは、薬剤師さんや医療従事者の方に役立つ情報を発信しています。
臨床現場で大活躍の抗菌薬。
沢山あるけれど
- どんなふうに分類されていてどんな薬があるのだろう?
- そもそも抗生物質との違いは?
- どんな種類がある?
次のような、抗菌薬の基本についてまとめました。
この記事では
- 抗菌薬とは?
- 抗菌薬の分類一覧とその概要
本記事では、いまさら聞けない抗菌薬の基本の基本、分類や種類について解説します。
参考にしていただければと思います。
抗菌薬とは?
「抗菌薬とは細菌を殺したり、増えないようにする薬」
抗菌薬は、抗真菌薬や抗ウイルス薬等と同じ抗微生物薬の中の一つで、細菌を殺滅したり増殖を抑制する薬。
つまり、細菌を殺したり、増えないようにする薬です。
細菌とは別物である真菌やウイルスには効果がありません。
「細菌と真菌の細胞の構造は全く違う」
細菌も真菌も「菌」が付いているので、
同じ仲間だと思われがちですが細胞の構造は全く異なります。
細菌は、染色体DNAが細胞の中に裸で存在しているのに対し(原核生物の仲間)、
カビ、酵母、キノコの仲間である真菌は、
染色体が膜に包まれた核の中に存在しています(真核生物の仲間)。
ちなみにヒトも真核生物です。
「細菌とウイルスも全くの別物」
次に、ウイルスとの違いはどうでしょうか?
ウイルスとも全く別物です。
細菌は生物ですが、そもそもウイルスは生物なのか非生物なのか。
答えはその中間って感じです。
大きな違いは、細胞かどうか。
細菌は単細胞の生物で、細胞分裂により増殖します。
栄養さえあればほとんどの細胞は自分で増殖できます。
ウイルスは、細胞ではなく生物の細胞に感染する複合体で、生物の細胞に入り込み、細胞の機能や構造を利用して増殖します。
つまり細胞と異なり、単独では生きられない寄生体なのです。
細胞・・・真核生物の仲間
真菌・・・原核生物の仲間
ウイルス・・・単独では生きられない寄生体
「抗生物質は抗菌薬の1つ」
抗生物質と抗菌薬はどうちがうのでしょうか!?
抗生物質は、カビなど微生物から作られた抗菌薬で、人工的に作られた抗菌薬は合成抗菌薬と呼ばれます。
この2つをまとめて抗菌薬と言います。
つまり、抗菌薬の種類の一つが抗生物質という事ですね。
ただ、日常的にはほとんど同じ意味で使われています。
抗菌薬 = 合成抗菌薬 + 抗生剤
5つに大別される抗菌薬
抗生物質は沢山の種類があり、下記5種類に分類されています。
- 細胞壁合成阻害薬
- たんぱく質合成阻害薬
- 核酸合成阻害薬
- 葉酸合成阻害薬
- 細胞膜機能障害薬
それでは、1つ1つ解説していきます。
① 細胞壁合成阻害薬
細胞壁合成阻害薬は、細胞壁の主成分ペプチドグリカン層の合成を阻害します。
細胞壁はヒトの細胞に存在せず、細胞の生存には必要なので選択毒性の視点からも標的として好ましい抗菌薬です。
選択毒性とは、互いに近接した油の2種の生物のうち、
一方には害を与えないで他方に損傷を与える事です。
つまり、細胞壁合成阻害薬は選択毒性が高いという事ですね。
【細胞壁合成阻害薬の種類】
- β-ラクタム系
- ペニシリン系 … ペニシリンG、サワシリン、ユナシン、オーグメンチンなど
- セフェム系 … セファメジン、セフゾン、メイアクトMSなど
- カルバペネム系 … オラペネム、メロペンなど
- モノバクタム系 … アザクタム
- ペネム系 … ファロム
- グリコペプチド系 … 塩酸バンコマイシンなど
- ホスホマイシン系 … ホスミシンS
② たんぱく質合成阻害薬
たんぱく質合成阻害薬のターゲットは、リボソームです。
たんぱく質が作られる過程はDNA→RNA→タンパク質という感じです。たんぱく質の合成には「転写」と「翻訳」が行われます。
DNAは細胞から細胞へ受け継がれる遺伝子の本体。
①遺伝子情報を持つDNAを転写してmRNA(メッセンジャーRNA)へコピー
②コピーした遺伝子情報を読み取って新しいたんぱく質を作る作業(翻訳)
その後半の翻訳の部分の仕事をするのがリボソーム
DNAは設計図、RNAはUSB、リボソームは新しい工事現場というイメージ
細菌が増殖するにはたんぱく質合成が必須です。
その過程のリボソームを阻害して細菌の増殖を抑えます。
【たんぱく質合成阻害薬の種類】
- マクロライド系 … エリスロシン、クラリス、ジスロマックなど
- リンコマイシン系 … ダラシンなど
- オキサゾリジノン系 … サイボックス
- クロラムフェニコール系 … クロロマイセチンなど
- アミノグリコシド系 … ゲンタシン、アリケイス、トブラシンなど
- テトラサイクリン系 … ビブラマイシン、ミノマイシンなど
③ 核酸合成阻害薬
DNAとRNAを合わせて核酸と言います。核酸は新しい細胞を作り出すのに必要不可欠です。
核酸が作られる過程を阻害して、遺伝情報を引き出せないようにするのが核酸合成阻害薬です。
【核酸合成阻害薬の種類】
ニューキノロン系・・・シプロキサン、クラビットなど
④ 葉酸合成阻害薬
葉酸はビタミンB群の一種で、DNAの材料ヌクレオチドやアミノ酸を合成する時の補酵素です。
この葉酸の合成経路を阻害するのが葉酸合成阻害薬です。
【葉酸合成阻害薬の種類】
ST合剤 … バクタ(ダイフェン)など
⑤ 細胞膜機能障害薬
細胞膜に結合して膜の輸送など膜の機能を阻害する抗菌薬です。
細胞膜はヒトにも存在するので選択毒性が低く、他の抗菌薬と比べて副作用が生じやすいのが特徴です。
【細胞膜機能障害薬の種類】
- リポペプチド系 … キュビシンなど
- ポリペプチド系 … コリスチンなど
※抗結核薬も抗菌薬ですが、使用される場面が限定的で一般の抗菌薬とは区別される事が多いです。
まとめ
- 抗菌薬とは、抗真菌薬や抗ウイルス薬等と同じ抗微生物薬の中の一つで、細菌を殺滅したり増殖を抑制する薬。つまり、細菌を殺したり、増えないようにする薬です。
- 細胞の構造が異なる真菌やウイルスには効果がありません。
- 抗生物質は、抗菌薬の一つで微生物から作られています。人工的に作られた抗菌薬は合成抗菌薬と呼ばれます。
- 抗菌薬は大きく5種類に分類されます。抗結核薬も抗菌薬ですが、使用が限定的なので一般的な抗菌薬とは区別される事が多いです。
参考になったら嬉しく思います。
※参考文献
・岡庭豊発行「薬がみえる」株)メディックメディア2020年12月11日第1版第5刷
・武田信発行「治療薬ハンドブック2023」株)じほう2023年1月15日2023年版
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